外壁塗装の作業は、塗料を1回塗るだけで完了するわけではありません。下塗り・中塗り・上塗りというように複数回の塗装をすることが基本です。そのうちの最初の段階、下塗りで使われることが多い塗料がシーラーです。
シーラーの持つ役割やシーラーのタイプごとのメリット・デメリットなど、塗料選びの際に知っておくべき情報をチェックしていきましょう。
シーラーとは
シーラーとは外壁塗装で最初に塗る下塗り塗料のうちの1つです。シーラーには以下のような役割があります。
中塗り・上塗りと塗装面の密着性を高める
シーラーには中塗り・上塗りに使われる塗料と外壁の塗装面の密着性を高めるという役割があります。中塗り・上塗りに使われる塗料を下塗りなしでそのまま塗ってしまうと外壁に密着しにくく剥がれやすくなってしまうので、下塗りは必須です。
塗料の吸い込みを防ぐ
劣化している塗装面は塗料を吸い込むという特徴を持ちます。あらかじめ塗装面に吸い込ませることで上塗り塗料の吸い込みを防ぐことも、シーラーの担う役割の1つです。シーラーなしで上塗りを行うと艶あり塗料の艶が失われるなど、仕上がりに問題が出ることがあります。外壁の外観を美しく見せるためにもシーラーは必要です。
塗装面のアルカリを抑える
モルタルコンクリートが素材の外壁は、アルカリが塗装面の劣化を引き起こすことがあります。シーラーはこのアルカリを抑える役割も持っています。塗り替えの頻度を減らすためにも下塗りは重要な工程です。
他の下塗り塗料との違い
シーラー以外にも下塗り塗料は存在します。シーラーと同じように使われる塗料としてプライマーがありますが、シーラーとプライマーの違いは曖昧です。人によって定義が異なるものの、ほぼ同じような塗料と考えて問題ありません。シーラー・プライマー以外でよく使われる下塗り塗料としてはフィラーがあります。
フィラーとの違い
フィラーは塗装面の段差を調整したり、細かいひび割れを補修したりする目的で使われる下塗り塗料です。場合によってはシーラーで塗装した後にフィラーを使って、下地の調整を行う場合もあります。また、シーラーとフィラーの両方の役割を兼ね備えた製品も販売されているので、そちらを使う場合もあるでしょう。
シーラーの種類
シーラーには大きく分けて水性タイプと油性タイプの2種類があります。
水性タイプ
水性タイプのシーラーとしては、合成樹脂エマルション型シーラーが知られています。
・合成樹脂エマルション型シーラー
合成樹脂エマルション型シーラーはシーラーの中でも最もポピュラーな塗料です。油性の上塗り塗料との組み合わせには向いていないため、上塗り塗料としては合成樹脂エマルション型塗料を選ぶことが基本となります。
油性タイプ
油性タイプのシーラーには、熱可塑性合成樹脂系溶液型シーラーと溶剤型熱硬化性合成樹脂シーラーがあります。
熱可塑性合成樹脂系溶液型シーラーは、塩化ビニル共重合体・塩素化ポリプロピレン・塩化ゴムといった樹脂を用いた下塗り塗料です。代表例としては、塩化ビニル樹脂系シーラーが挙げられます。合成樹脂エマルション型シーラーより塗装面の密着性を高める効果が高いことが特徴です。
溶剤型熱硬化性合成樹脂シーラーは、基剤と硬化剤で構成された2液型のシーラーです。エポキシ樹脂・ポリウレタン樹脂などの樹脂が用いられます。基剤と硬化剤が反応して硬化することで下地を補強できる点が特徴です。
水性タイプと油性タイプのメリット・デメリット
水性タイプと油性タイプのシーラーはそれぞれメリット・デメリットが異なります。外壁塗装の状況に応じて適した特徴を持つタイプのシーラーを選びましょう。
水性タイプのメリット
水性タイプのシーラーには以下のようなメリットがあります。
水性タイプのシーラーは浸透性が低く、劣化が少ない塗装面に向いている塗料です。下地を補強する必要がない場合に使いやすい点がメリットとなります。
水性タイプのシーラーは臭いが少なく、塗装作業がしやすい塗料です。有害物質を気にする必要が少なく、健康に優しい点もメリットとなります。
水性タイプのデメリット
水性タイプのシーラーのデメリットは以下の通りです。
劣化の激しい塗装面に水性タイプのシーラーを使うと、十分に浸透する前に塗膜が形成されてしまいます。そのため、劣化の激しい外壁への塗装には適していません。
水性タイプのシーラーは油性タイプと比べて乾燥にかかる時間が3~4時間と長めです。そのため、施工時間も長めになってしまう点がデメリットとなります。
油性タイプのメリット
油性タイプのシーラーには以下のようなメリットがあります。
浸透性が高いため劣化が激しい塗装面に向いている塗料、それが油性タイプのシーラーです。ケイ酸カルシウム板などの下地には最適とされています。
油性タイプのシーラーは乾燥時間が1時間未満と短く、スピーディーに塗装を行える点がメリットです。ただし、2液型のシーラーを使う場合、短時間で正確に塗装を行う技術が必要になります。
油性タイプのデメリット
油性タイプのシーラーのデメリットは以下の通りです。
浸透性が高い油性タイプのシーラーを劣化が少ない塗装面に使っても、その特徴をうまく活かすことはできません。
油性タイプのシーラーは臭いが強いため、塗装作業の際には十分に気を付ける必要があります。塗装用具の洗浄の際、臭いや排水への注意が必要な点もデメリットです。
代表的なシーラーまとめ
日本国内で販売されている代表的なシーラーには以下のような製品があります。
ファイン浸透シーラー(日本ペイント)
エポキシ樹脂の用いられた2液型のシーラーがファイン浸透シーラーです。油性タイプではありますが、強溶剤の塗料と比べると臭いはマイルドになっています。透明とホワイトの2色が販売されており、状況に応じて適した製品を使うことが可能です。
SKクリヤーシーラー(エスケー化研)
SKクリヤーシーラーはアクリル樹脂エマルションを用いた水性タイプのシーラーです。作業の際に火事が起きる心配をせずに使うことができます。
下塗り塗料を使わない悪徳業者に注意!
シーラーなどの下塗り塗料を使わない悪徳業者も存在します。見積書にシーラーの記載があるにも関わらず、実際には下塗りを省略して中塗り・上塗りを行う業者がいるので注意してください。下塗りを省略した場合でもすぐに問題が起きることは少なく、後からトラブルになる場合が多いです。
シーラーと中塗り・上塗り用の塗料は基本的に見た目の色が違うので、作業中に塗装面の外観をチェックすれば手抜き作業に気付きやすくなります。
複数の見積もりをとって手抜き業者を避ける
手抜き業者を避けたいなら、複数の見積もりをとることをおすすめします。複数の見積書を比較することで怪しい点に気付きやすくなりますし、より安い費用で依頼できる業者を見つける手助けにもなるからです。それぞれの施工実績を確認することで、信頼できる業者かどうかを判断する材料も増えます。
まとめ
下塗りに使われるシーラーのタイプやそれぞれのメリット・デメリットについて解説しました。シーラーを使わない手抜きを行う悪徳業者もいるので、外壁塗装を依頼する際には注意が必要です。